大人の発達障害
発達障害は、先天的に脳の働きに偏りがあり、日常生活や社会的な場面での行動に困難を生じる状態を指します。主には注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)に分類されますが、例えばADHDと診断された方でも、共通した傾向はあるものの、実際の社会生活での困難の出方はそれぞれ違い、個々の状況に応じた支援が重要となります。このページでは、それぞれの特徴について簡単に触れます。
特徴について
・ADHD
不注意、衝動性、多動性が特徴です。不注意により、細かいミスが多かったり、衝動性の高さから思ったことをすぐ口に出してしまうなどが見られます。一方で、興味を持ったことには集中力を発揮し、優れた創造性を見せることもあります。
・ASD
コミュニケーションの困難さや、興味や活動が特定のものに偏る特徴があります。社会的なルールや人の気持ちを理解するのが難しいことが多く、場面によっては不適切な行動を取ってしまうこともあります。感覚が過敏で、特定の音や光、触感などに強く反応する場合もあります。しかし、特定の分野において驚異的な記憶力や集中力を発揮することがあります。
・LD
読む、書く、計算するなどの特定の学習分野において困難を抱える発達障害です。それにより、学業成績に影響を与えることがあります。適切な指導と支援を受けることで、得意分野を伸ばしながら学習の困難を補うことが可能です。
発達障害は幼児期から上記の傾向があるときに付される病名ですが、全ての方が幼少期からその診断を受けるわけではありません。その傾向があったとしても所属する社会や勤めてきた役割、性別によっては気づかれずに成長することも多いです。しかし、大人になり様々な役割を担うようになった際に、ある領域での苦手さが途端に強調されるケースがあります。例えば、昇進に伴い突然部下のマネージメント業務や事務仕事が増えた結果、それまでなかった社員間の板挟みにあったり、細かい制度を把握しておかないといけなかったり、今まで上司に聞いてなんとかしていたことができなくなったりします。そういった困難に直面した際、これまで経験したことのない苦手さなので、多くの人は何に躓いているのかがわからずに戸惑うことが多いです。
不眠や食欲不振、気持ちの落ち込みなどをきたし、これを二次障害と呼びます。大人の発達障害の方では、主にこの二次障害で受診されるケースが多いです。当院で行う治療について
前述の通り、大人の発達障害では二次障害で受診されるケースが多いです。はじめに付される病名としては適応障害やうつ病などになることが多いです。受診に至った経緯や状況、幼少期のエピソードなどを伺い、まずは疑う(仮説を立てる)ところから始めます。初めて受診した時というのは、精神的にも追い込まれていることが多く、そういった時にはどんな方でも自身の特性は強くでます。また、不安が強い時には注意を適切に払えないし、衝動的になってしまうのは誰でもある傾向です。ですので、初めに伺ったお話から発達障害の可能性を考えることはしますが、断定することはしません。状況が落ち着いたり、落ち着かないまでもある程度経過を見た上で判断します。そして、現在の科学では発達障害を診断する検査はありません。
また、二次障害で受診されたケースの場合、上記のように発達障害の可能性が考えられることはありますが、それ以外の問題も複雑に絡み合って症状を呈していることも多いため、発達障害の存在が分かったとしても、発達障害のみを原因とすることはほとんどありません。なお、“それ以外の問題”については適応障害(①環境調整)(②分析)のページが参考になるかと思います。
結論としては、二次障害で受診されたケースでは、発達障害も含め二次障害を引き起こした原因を考え、問診や心理検査で発達障害が特定された場合には、その内容や状況に応じて投薬治療や環境調整を相談させていただきたいと思います。
※精神科の病気は個別性が高く一律な治療は難しいため、こちらの内容は当該患者様全てに上記の診療を保証するものではありません。
【参考文献】