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身体症状症

身体症状症は、医学的な検査では十分に説明できない身体の症状が続き、強い苦痛や日常生活への支障をもたらす疾患です。以前は「身体表現性障害」とも呼ばれていました。

この病気の特徴は、患者さん自身が身体的な不調を自覚し、病院などで検査を行なっても、それを説明する検査結果を得られないという点です。頭痛や腹痛、めまい、しびれなどの症状が現れることが多く、症状が慢性化することもあります。そういった症状を治療するために、内科や耳鼻科などに何度か受診したものの、明らかな異常が指摘できず、通常効くと予想される薬(鎮痛薬など)も効果がないため、検査した医師から精神科受診をすすめられて受診につながるパターンも多いです。

症状について

  • 身体症状症の症状は多岐にわたりますが、大きく下記の4系統に分けられることが多いです。

    • 痛み:頭痛、腹痛、関節痛、筋肉痛などの慢性的な痛み
    • 消化器症状:吐き気、胃の不快感、下痢や便秘
    • 神経系の症状:しびれやめまい、ふらつき、脱力
    • 呼吸や心臓の症状:息苦しさ、動悸、胸の痛み

    前述の通り、これらの症状は、医学的な検査を行っても原因が見つからないことが多く、周囲から「気のせいではないか」と誤解されることも少なくありません。しかし、患者さんにとって症状は現実としてあり、強い苦痛をもたらします。周囲に理解されないことによる孤独感などにも通じていきます。

  • 原因と発症のメカニズム

    身体症状症の発症には、心理的・生物学的・社会的要因が複雑に関係しているとされていますが、明らかな原因や病態は特定されていません。古典的には長期的に解決されない、または適切に処理されない葛藤は行き場を失い、“衝動性”か“体の痛み”として表現されるとされています。つまり、身体症状症による症状は葛藤の置き換えの一つであり、SOSのサインとも呼べます。

当院で行う治療について

当院で行う身体症状症の治療は精神療法と薬物療法、環境調整です。

①精神療法

前述の通り、長期的な葛藤があることが多いです。どんな葛藤(理想と現実のギャップ)があったのかについて一緒に考えていきます。社会、家庭でどのような役割を担ってきた、担わされてきたのか、どのような価値観で動いてきたのか、それらはどのような経験からくるのかといったことなど様々な切り口から考えます。私の役割としては、これまで無意識にしていた選択の傾向に気づくように誘導することです。つまり、言語化するということで、専門的に言えば、前意識に持ってくるということになります。しかし、今まで言語化が進まなかった理由は人それぞれあります。認知機能のこともあるでしょうし、話せる人間が周囲にいなかったり、人に弱みを見せないように育てられてきた人もいるかもしれません。少し、厳しいようにも聞こえてしまうかもしれませんが、今まで何かしらの理由で難しかったのは、それなりの理由があるからであり、そう簡単にできるわけではありません。また、無意識にあったことに気づくということは、ストレスになることも多く、患者様も大変な思いをすることが多いです。なので、患者様が受診してすぐのタイミングで取り掛かるというよりは、少し症状が落ち着き通院にも慣れてきた頃から状態を見ながらゆっくりと始めます。中々周囲には話せないことも多いと思いますので、病院という、安定した守られた関係性の中でできたらいいなと思っています。

②薬物療法

直接的な有効性が確立されているものはありません。睡眠薬などの対症療法や漢方などが用いられることがあります。

③環境調整

ストレスから物理的な距離をとるということです。解離は心理的な距離を取るということですので、環境に物理的にその役割を担ってもらうことになります。

以上が、身体症状症に対して当院で行いたいと考える診療です。

※精神科の病気は個別性が高く一律な治療は難しいため、こちらの内容は当該患者様全てに上記の診療を保証するものではありません。

【参考文献】

吉原一文ら 身体症状症 日本内科学会雑誌第107巻第8号

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