自閉症スペクトラム(ASD)
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、発達障害の一つで、主にコミュニケーションや社会的な相互作用に困難を示す状態です。ASDは、症状の現れ方や程度が個人によって大きく異なるため、"スペクトラム"という言葉が使われています。スペクトラムとは、連続的な幅の中に多様な特徴が存在することを意味します。
特徴と症状について
ASDの主な特徴は、以下の2つに大別されます。
①社会的コミュニケーションと対人関係の困難
・他者との会話がぎこちない、話の流れが読みにくい
・相手の感情や意図を理解するのが難しい
・アイコンタクトや表情などの非言語的なコミュニケーションが不足する②限定された興味・活動のパターン
・特定の物事に強い興味を示し、繰り返し取り組む
・予測できない変化や予定の変更に強い不安を感じる
・感覚過敏や鈍感が見られることがある(音や光に敏感、特定の感覚が好ましいなど)ASDは世界で広く使われている診断基準では、「神経発達症」に分類されます。その名の通り、生来からの神経の発達のあり方によって起こりますので、上記の特徴(症状)は、幼少時から認められことが多いです。目と目が合わない、にっこりと笑いかけてもほほえみ返さない、指さしが少ない、模倣が少ない、言葉の発達が遅い、語彙が広がらない、こだわりが強い、感覚の過敏さがある、同世代の集団の中に入っていけないなどといったことがあり、1歳半検診や3歳児検診で指摘されることがあります。しかし、言葉の発達が良好である場合には、小学校入学後や、成人になってから初めて診断を受けることも多々あります。
また、ASDは発達をしないわけではなく、そのあり方によって起こるものなので症状や程度は年齢とともに刻々と変化します。さらに発症自体には関与しなしないものの、適応の程度は、環境との関わりや養育の在り方、療育などによって幅が生じるのも事実です。
当院で行う治療について
当院に来院される患者様では、ASDの症状自体で来院されることより気分の落ち込みや不眠など別の症状(二次障害)で受診されるケースが多いのではないかと思います。まずはそこに対する治療を始めます。こちらについて気になった方は、大人の発達障害のページをご確認ください。
ASDへの治療という点では、疑い診断をつけるということがスタートになります。しかし、ASDの症状は上記の通りかなり抽象的です。スペクトラムともありますが、まさにその通りで、どの特性がどの程度、どの領域に出るのか、自身の経験や性格の影響も受けるため、多様性が高いです。また、おかれている状況によっても症状の出方が異なるため、一時的な状態では判断ができず診断までに時間を要することも多いです。診断または傾向がついた後には、傾向についての理解と把握を行います。こちらについては、【自閉スペクトラム症に気づいてケアするプログラム(ACAT)】を参考にしながら、ASDと関連する困ったことを特定し、そのパターンを同定し対策を練ることを目標とします。
※精神科の病気は個別性が高く一律な治療は難しいため、こちらの内容は当該患者様全てに上記の診療を保証するものではありません。
【参考文献・URL】
・公益社団法人 日本精神神経学会 松本英夫先生に「ASD(自閉スペクトラム症)」を訊く
・大島郁葉ら (2020). ASDに気づいてケアするCBT―ACAT実践ガイド 金剛出版