統合失調症
統合失調症は思考や感情、行動に影響を及ぼす精神疾患の一つで、脳内の情報処理や現実の認識が難しくなる病気です。日本では人口の約1%が一生のうちに罹患するとされており、決して珍しい病気ではありません。多くの場合、10代後半から30代にかけて発症し、早期の治療が重要です。聞こえるはずのない声や音が聞こえ、それに行動を振り回されてしまったり、強い思い込みが訂正できないなどの症状があります。また、喜怒哀楽などの感情が鈍くなってしまい入浴などの日常生活への意欲が保てなくなったりもします。
当院で行う治療について
統合失調症の治療は薬物療法と精神療法が主体となります。
①薬物療法
抗精神病薬を中心とした治療で、上記の症状を抑えます。近年では副作用の少ない薬も増えています。当院では、『統合失調症薬物治療ガイドライン2022』に基づいて治療を行います。
②精神療法
統合失調症に対する精神療法には、認知行動療法、心理教育や社会生活技能訓練などがあり、患者様の症状や困りごと、置かれている状況などに応じてそれらの要素を流用した形での治療を行います。私の場合は、自分の研究テーマでもあるself-stigma(セルフスティグマ)という視点を大切にしたいと考えています。まず、self-stigmaとは精神障害者が、一般市民が精神障害者に対して抱くステレオタイプな誤った情報を自分自身に当てはめることとされています(corriganら、2008 )。この概念は、診断や効果の検証などを目的とした際には出てくる話題ではありませんが、患者様自身の幸福に直結することだと考えており、非常に重要な概念だと思っています。self-stigmaの向上をいかにするかという議論は2000年代前半より活発になっており、患者様にご自身の経験や考えについて語っていただき、それを否定せず共有するような取り組みが効果的であるとされています。そのため、診療においては基本的にはそのスタンスを持ちたいと考えています。中々自分自身や病気のことについては話しにくいことも多いかと思います。そんな中でも少しずつ関係を築きながら信頼していただけるよう努力しますので、様々なお話をお伺いできると嬉しいです。
※精神科の病気は個別性が高く一律な治療は難しいため、こちらの内容は当該患者様全てに上記の診療を保証するものではありません。
【参考文献】