パニック障害
パニック障害は、突発的に強い不安や恐怖感が襲い、身体的な症状を伴う発作(パニック発作)が繰り返し起こる精神疾患です。初めは誘因があり起こることが多いですが、徐々に誘因なく起こるようになることが多いです。誘因とは、逃げ場のない閉鎖空間であったり新型コロナウイルス感染症への罹患であったり多岐に渡ります。
症状について
パニック発作中には以下のような症状が見られます。
- 強い動悸や心拍数の増加
- 発汗
- 息切れや窒息感
- めまいやふらつき
- 胸の痛みや圧迫感
- 手足の震えやしびれ感
- 非現実感や自己分離感
- 死の恐怖や制御を失う恐怖
これらの症状は突然発生し、通常10分以内にピークに達します。その後、徐々に収まることが一般的です。上記にあるように、発作中には死への恐怖を自覚することが多く、平気ではいられません。救急要請をし、搬送されることもしばしばあります。
パニック発作を繰り返した結果、また発作がおきてしまうのではないかという不安感(予期不安)をいだくことがあります。予期不安が強くなると、発作を予感させる状況や場所そのものが恐怖となりそれを避けるようになり、日常生活に支障をきたすことになります。さらに、パニック発作がおきてしまった際に逃げられない(バスやレジの列などのこともあります)、助けてくれる人がいないと思う場所(人が全くいない場所のこともあれば、逆に雑踏などもあります)に行くことに不安や恐怖を覚えて外出を控えることもあります(広場恐怖)
当院で行う治療について
パニック障害の治療は、薬物療法、精神療法、環境調整の三つからなります。
①薬物療法
抗不安薬や抗うつ薬が使用されます。これらの薬剤は発作の頻度を減らし、不安感を和らげる効果があります。抗うつ薬は高容量が必要なことが多く、効果が出るまでの時間を要することも多いです。抗うつ薬の効果が出るまでの間には、抗不安薬を用いることもありますが、こちらはひと月程度の使用にとどめることが理想的です。また、抗うつ薬は吐き気が出現したり、処方直後には逆に不安感が強くなることなどもありますが、使用とともに1週間程度で軽減することが多いです。薬物療法を行うかどうか、増量のスピードなどについては相談し決めたいと思います。
②精神療法
パニック障害の治療は、辛い状況に挑んでいかなければならず、精神的な負荷が強くなることが多いです。もちろん、その挑戦はタイミングを選ぶ必要がありますので、タイミングやペースについては相談をします。精神療法では、その挑戦を支えることがメインとなり、疾患についての説明(心理教育)、認知行動療法的なアプローチなども用いながら、支持していきます。
以下に心理教育の要点について記載しておきます。
a)身体症状は、パニック障害という精神疾患により不安に伴って出現しているものである
b)パニック発作、予期不安、広場恐怖などの症状がある
c)アドレナリンなどの物質が誤って出る脳の誤作動である
d)発作で死ぬことはない(保証)
e)薬で効果的に治療が可能である
f)周囲の理解と協力が必要である疾患に関する知識を持っていただき、自身の状況を見えるようにするのが狙いです。
上記に加え、パニック発作時の対応として、リラクゼーション法なども身につけることができるとより対応の幅が広がります。
治療が進むと、まず、きっかけのない突発的なパニック発作の頻度が少なくなっていきます。その点の改善が見えたら、不安階層表上で、状況と不安の強さに点数をつけさらに状況を可視化し、それにそって行動実験を行っていきます。③環境調整
パニック障害の治療においても、環境へのアセスメントは必要不可欠です。詳細は、『適応障害』のページの【当院で行う治療】①環境調整をご参照いただけますと幸いです。
※精神科の病気は個別性が高く一律な治療は難しいため、こちらの内容は当該患者様全てに上記の診療を保証するものではありません。
【参考文献】